NHK仕事のプロフェッショナルで岩田書店をみた。
事例Ⅱみたいだった。
なんとなく次のようなことをおもった。
・過去
好況でおそらく需要が供給を上回り、業者から卸された本を
そのまま店頭で販売してもよく売れた。
本が他社と同じ取り揃えでも大丈夫だった。
・現在
5フォースでいうところの代替品や競合
(ネット通販、ウェブコンテンツ、宅配、コンビニ、大型書店)が
台頭し、業者から卸された本を
そのまま店頭販売しても売れず、小規模な書店は相次ぎ倒産。
客の好みも細分化され、多品種少量に対応するか
ニッチを狙い差別化集中する必要がでてきた。
・1万選書
一万円で岩田氏が顧客に合った本を選定し発送する。
顧客に合う本を選定するためにカルテ(詳細な個人的アンケート)を
顧客が提出する。
つまり、顧客情報(嗜好)が手に入り
一人ひとりに合った本を提供できる。
ワン・トゥ・ワンマーケティングだ。
このサービス料を取ればビジネスモデルとして
成り立つが、実際はサービス料は取っていない。
書籍代と送料のみであるため利益率は高くはない。
だが一度気に入った顧客からはお礼の手紙などが来たり
口コミにより宣伝効果がでたりで
顧客ロイヤルティの獲得や知名度の向上に繋がっている。
NHKで1時間まるまる放送されれば
知名度の向上はかなりのものだろう。
パプリシティを狙うのは難しいが
できれば費用対効果は高いのが実感できる。
一万選書が可能となる前提として
岩田氏の膨大な読書量と本への情熱がある。
他に真似できず模倣困難性の高い経営資源だ。
もちろん万能というわけではなく
岩田氏はコミック系は読まないので
コミックを求める人には向かない。
これ、結構応用ができると思った。
映画を年間何百タイトルとみている人とか
洋楽ロック、ジャズ、クラシックとかにすごく詳しい人とか
同様にアンケートを元に映画や楽曲を選定するサービスが
今後増えるかもしれない。
なにも本やDVDなど物を在庫しなくても
結果さえでれば、あとはネット宅配やデータのダウンロードで
対応できる。
しばらくしてAIがもっと発達すれば
すぐに陳腐化するサービスになるかもしれないが。
いや、すぐなるだろう。
私が知らないだけでこれらのサービスは
もうありそうだけど。
B2Cだとなんだか新しそうなサービスにみえるが
B2Bでみればごく当然なことである。
顧客の要望をよく聞いてそれに応えているだけだ。
ICTシステムの構築や、ビルを建てるなど
顧客毎に合わせてつくるのが一般的だろう。
岩田氏も隣町の学校から図書館の本の選定を依頼されていたが
詳細で具体的なアンケートがないせいか
選定に苦労している様子であった。
選定した本はどの程度生徒に受け入れられたのだろうか。
1万選書はやはり個人一人ひとりに
岩田氏が真剣に寄り添うところに価値があるのだろう。
書店の場合は自社ブランド品を作るのが難しいから
ターゲットを絞ってコンセプトを明確にしたお店が目立つ。
まさか、差別化の対応策として
従業員に年間千冊本を読ませる
という答えはないだろうが
顧客情報のデータベース化は
去年の事例Ⅱを思い出させる。